
(要約)
連邦政府各機関における、既存設備に適用可能な省エネ技術の採用促進を狙いとした米国
政府刊行物
アメリカ合衆国エネルギー省発行
貫流型・熱コレクター
(換気用として外部空気の太陽熱による予熱)
−シンプルで確実な技術が暖房費の大幅な削減を可能とする−
大統領令「ミリオン・ソーラー・ルーフ」は、2010年までに、百万件以上のソーラ―・エネルギーシステムを住宅、商業、公共建物に設置する事を目標としている。そのうち2万件は、連邦政府の建物に設置される予定である。この大統領令をバックアップしながら、同時に米国の建物の省エネ性と環境保護向上への継続的努力の一環として、米国エネルギー庁の「連邦エネルギー管理計画」(FEMP)は、連邦政府機関の建物へのソーラーシステムの導入を支援している。対象となるソーラーシステムは、光電池(PV)、ソーラー温水(建物、プール用)及びソーラー暖房の三つである。
ここで紹介するソーラー貫流型・熱コレクターは、既に検証済みで、直ちに利用可能な、連邦政府諸施設での利用価値が大きいと判断されるソーラー暖房技術である。この貫流型・熱コレクターは、換気用の外気を室内に導入する際に、太陽熱で予熱するものである。この技術は、建物内の大きなスペースの暖房、または、大量の換気が必要な場合に特に適している。この技術は、換気用の空気を太陽熱で予熱する事により、当該建物の既存の暖房システムの負担を大幅に軽減し、エネルギーとお金の節約をもたらす。本
Federal Technical Alert (FTA)
は、連邦政府設備の管理者に、自分が管理している施設にこの貫流型・熱コレクターが適しているかどうかの判断資料を提供する事を目的としている。
省エネのメカニズム
貫流型・熱コレクターは、取り入れ空気を太陽熱で暖める事によって、建物の暖房システムの負荷を軽減する。外気温度の上昇幅は、最大 40℃にも達し、日中の暖房負荷の全部、または一部を削減する。曇天や外気温度が極端に低下した時には、この貫流型・熱コレクターの効率は低下するが、それでも有用エネルギーを提供して、暖房費削減に貢献する。
建物の暖房負荷の一定割合をクリーンで無料の太陽熱で代替する事の他に、この貫流型・熱コレクターのトータルシステムは、異なった方法で更にネルギーとお金の節約に貢献する。その一つは、建物の南面からの熱ロスの回収である。即ち南壁面からの放散熱は、構造壁面とコレクターに挟まれた空間で捕捉され再度室内に戻ってくる。更に、室内空気攪拌により、室内の高さによる温度差解消による省エネ効果も期待できる。
紹介技術の選択について
連邦政府施設での利用価値が大きいと判断されるが、未だ本格的に採用されていない技術の発掘、紹介が本FTAシリーズの目的で、ここで取り上げるものは、連邦施設で若干の実績を持つものに限定している。本シリーズで紹介する新技術は、専門業界紙誌または直接照会を通してその詳細が確認されたものである。メーカー、公営企業、企業団体、研究機関、実例のある連邦政府機関、その他の関係機関等々から裏付け情報を得ている。また紹介する技術は、実績データの有無によって、開発技術(実績未証明)と実用技術
(実績確認済み)に区分される。
貫流型・熱コレクターは、最近20年間に開発された多くの省エネ技術の一つである。このコレクターは、複数の連邦設備での実績から、設備費用、残存純価値、省エネ効果等々の点でその採算性 (ライフサイクル・コスト・イフェクト)が立証された。審査の対象となったこれ以外の技術については、今回は結論が出ず、引き続きFederal
Technical Alert シリーズの中で検討する事となった。
この技術の応用について
寒い、日光があたる地域の暖房をしている建物で、何らかの換気装置を必要とし、南側に露出壁面が有れば、この貫流型・熱コレクターを活用する事が出来る。大量の暖かい空気の取り入れが必要な機械工場、車両機械工場、化学物質の貯蔵施設等々の建物がこの貫流型・熱コレクター採用のメリットが大きい。長期保管用の倉庫で換気を必要としないものは対象とならない。同じく、空気の完全循環、洗浄システムを備えた建物も対象外となるだろう。最近のオフィスビルに多く採用されている排気の熱回収システム(工場建物には未だ普及していない)も取り入れ空気の予熱を行なっているが、このような熱回収システム付きの建物も、機能重複するので採用は難しいかもしれない。
実際の施工例
1997年現在、約40個所に貫流型・熱コレクターが設置されている。大半が民間部門であるが、連邦政府機関関係でも2個所、1つはコロラド州フォートカーソン陸軍基地 (2系列),もう1個所は、コロラド州ゴールデンのNREL−国立エネルギー研究所(1系列)に設置されている。
40個所の内の3個所については(GMのカナダ・オシャワ・バッテリー工場、フォードのカナダ・オークビル工場そしてNRDL)、貫流型・熱コレクターの設置後の実態が、詳細にモニターされている。
NRDLのケースについては、この貫流型・熱コレクター技術の適用として、理想的な例といえる。1300平方フィートの施設は、化学関係廃棄物の貯蔵建物で、内部の安全保持の為3千
Cfm
の換気を必要としている。加えて火災防止の為、室内は火気厳禁となっており、取入れ空気はガスではなく、電気で加熱している。300平方フィートの貫流型・熱コレクターが年間に14,310KWH(施設の換気用空気の加熱に必要なエネルギーの25.7%)を節約している。この地域の電力料金0.025ドル/KWH
で換算した年間の節約金額は、360ドルで、単純投資回収は、4.7年の計算になる。
ケーススタディ
カナダ・オシャワのGMのバッテリー工場は、 100,000平方フィートの施設で自動車用バッテリーを生産している。工場は1970年代に建設されたもので、内部は仕切りなしのオープンフロアで、天井高さは28フィートである。フルタイム2交代制で操業し、夜間と週末にメンテナンス作業を行なう。故に建物は24時間使用されている。1991年に工場幹部は、換気問題改善の為、貫流型・熱コレクターの設置を決めた。モニタリングの結果、設置された貫流型・熱コレクターは、1平方フィート当たり年間に
208,000 Btu の節約を得ている事が明らかとなった。この節約の大半(150,000
Btu /平方フィート/年)は、外気がコレクターを通過する時に回収される熱エネルギーから直接得られるものであった。節約の残り(58,000
Btu
/平方フィート/年)は、外壁を覆う貫流型・熱コレクターによる壁の通過熱損失の回収によるものであった。これら節約の経済価値は、不要になった暖房熱源の価格で決まる。
GMの工場では、蒸気が既存の主要の熱源であったが、この現状のシステムでは、必要な換気用空気を加熱して供給するには能力が不足していた。蒸気配管と排気ダクトを有する駒形屋根構造のパッケージ・ボイラーを導入する事が必要であった。このシステムの設備費用は、約 2.16ドル/cfmである。採用した貫流型・熱コレクターが供給するものと同量の空気を供給するには、上記蒸気式では25,250
cfm必要で55,000ドルの投資となる。更に蒸気式の場合のファンの運転には、プラス3.6kwの動力が必要となり、この経費年間1,430ドルが費用増となる。
実施にあたってのバリア
この貫流型・熱コレクターが克服しなければならない最大の課題は、いかにしてユーザーに認めてもらうかという事である。多くのソーラー技術は、 1970年代のソーラー市場の急膨張時期の粗製濫造による悪い印象の影響を引きずっている。多くの潜在需要家は、代替する既存技術のオプションがある限り、ソーラー技術の採用に消極的である。しかしながら、この貫流型・熱コレクター技術は、エネルギー消費を節約し、出費を削減する上で有効であり、且つ信頼できる技術である事を実証してきている。更に現在、その有効性を実証する化学的データーもその数を増やしている。
注)上記の「貫流型・熱コレクター」は、“ SOLARWALL”と同一のものであり、且つ、同商標権を持つ
Conserval Eng. Incのソーラー関連製品である。
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